【感想】スパイ教室 短編集 05 『焔』より愛をこめて

ネタバレあり

 丸ごと一冊クラウスの過去編。

 スラムで戦災孤児として生きていたクラウスは今とはまるで様子が違って、獣のような子供だったのが意外で驚きました。嫌だ嫌だとギードから逃げ回ったり、任務では敵相手にバールを振るい突っ込んでいくまるで洗練されていないクラウスが新鮮でした。

 『焔』のメンバーに鍛えられていくうちに徐々に現在の姿に近づいていき、特にルーカスとヴィレとのエピソードではクラウスを象徴する「極上だ」と「このお遊びにはいつまで付き合えばいい?」というフレーズのオリジナルが彼等だということが分かって受け継がれているもののエモさを感じました。

 エピソード的には三章の双子編がビュマル王国のクーデターを巡ってルーカス、反乱分子、王政府の裏切り裏切られての展開が意外性があって面白かったです。

 ラストの五章は感染症に侵された島に閉じ込められ疲弊していくクラウスと『銀蟬』の息詰まる攻防がシリアスで面白かったです。

 『焔』のメンバーに教えられた技術で『銀蟬』を追い詰めていくクラウスが生き延びるために助けた家族を犠牲にしていた事実はショックでしたが、スパイという表も裏もあるはずの世界の物語で綺麗なことばかりがあるはずがないことをあらためて思い知りました。

 『灯』の少女達とクラウスにそれぞれ接点というか因縁があったのも面白かったです。

 『焔』を壊滅に追いやった原因ともいえる《暁闇計画ノスタルジア・プロジェクト 》の正体がなんなのか気になるところです。