ホラーな事件に遭遇する主人公が愛と正義の美少女怨霊と怪異を倒す物語でとても面白かったです。
読み始めて感じたのは現実世界が舞台ですがその情景描写がしっかりしてあってリアリティを感じることでした。実在の地名が多く出て来て東京の地理はまったく知りませんが聞いたことのある地名が出てくるといっきに現実的に思えます。さらに学校外を移動する場面などで感じるのですが風景の描写で印象に残ったのが二話目で被害者のアパートに向かう場面。だいたいどの辺りというのに加えアパートの隣に閉店したドラッグストアがあるという、一話目の三輪車と違いなんの伏線でもない単なる風景を書いてあるのがうら寂しい感じを増してなんだか印象に残りました。
その他にも怪異の詳しい由来だったりところどころ入れてくる情報から田花先生の知識の広さを感じました。
もうひとつ感じたのは素敵な言い回しをされるなあというところです。
特にお気に入りのところを引用させていただくと
道行く人々の大半がスマホを持ち歩く現代の東京に、お化けや妖怪が隠れ潜む暗闇が残っているとは思えない。そんなふわふわした連中が現れたところで街中を飛び交う電波に切り刻まれるのが落ちだ
ふわふわした連中が電波でバラバラになる様子をコミカルに想像したのでフフってなりました。
兄の手元をのぞいてから背中に軽く頭突きして出ていった。包丁を使っていないか確かめる気遣いに、諒介はくすりと笑う。もちろん本気で怒ったわけではない妹も、スプーンをくわえた口元は緩んでいた。
兄妹の微笑ましいやり取り。俳句の毒舌先生風に言うなら二人の表情を映さず口元だけにカメラを寄せるような描写が素敵だなと思いました。
食べた物は一体どこへ行くんだろう、消滅しているとしたら膨大なエネルギーが放出されて地球が危ないんじゃないか――といった疑問が今更ながらわくのだが、天体の危機は高校生の手に余るので関東地方の話を続ける。
宇宙規模の話からこれまた関東といういっきに現実に戻ってくるのが面白かったです。
ホラーミステリ部分ももちろん面白く、ホラーらしく綺麗に解決はせずちょっと後味の悪い感じも残るのですがキャラクターの明るさでそこは中和されているように感じました。
二話目なんか私は最後は幽霊の皆さんが肩組んでラインダンスしてる画が浮かびました。コミカルなんですが、それぞれ死んでることは変わらずその理由もちょっとあとにひく人もいますしそこを考え出すとちゃんとホラーだなと。
すでに二巻の制作も進んでいるようで続きが楽しみです。
最後、参考文献が載ってるあたりガチです。