【感想】創成魔法の再現者 7 新星の玉座 ‐偽りの神の壊し方‐

ネタバレあり

 教会の呼び出しを受け教会本部に向かうことになったエルメス達。

 様々な思いを抱きながら訪れたそこでは教皇派と大司教派に分かれ内部分裂が起こっていた。

 教皇派と一時的に手を組み残る三人の大司教を倒す事になったエルメス達は大司教が拠点とする迷宮に乗り込むことに。

 しかし、案内役の第二王女ライラの裏切りにより大司教グレゴリオの奇襲を受けてしまう。

 このまま大司教との激しいバトルが行われるのかと思いきや、意外な展開に向かうのが面白かったです。

 今まで美しいものにたくさん囲まれ純粋に育ってきたエルメスが初めて拒絶したいほどの醜悪に触れ悪しき感情から産まれた血統魔法に目覚めるのが意外でしたし、ラプラス達「組織」が大司教を倒し本格的にエルメス達の前に姿を現したのも驚きました。

 エルメスの師匠ローザは『空の魔女』と恐れられる存在で、作中でもバランスブレイカーと言えるべき戦闘能力を持っているのであまり表舞台には姿を現さないのですが、そんな彼女がエルメス達のピンチに駆け付けたのは驚きました。彼女の魔法『流星の玉座フリズスキヤルヴ 』は迷宮などの空が見えない場所とは相性が悪いはずだったのが、その弱点を改修してのけるのがさすがエルメスの師匠だと思いました。エルメスもそうでしたが、敵が自分たちの力を過去の戦いで見切ったつもりになっているのを、いつの時の話をしていると一蹴するのが格好良かったです。

 そしてなにより、今までエルメス達を助け導いてきたあのユルゲンが敵だったことが驚きで、エルメス達の良き理解者だと思っていた彼が娘であるカティアに心ない言葉をかけたのがとても悲しかったです。エピローグで一瞬裏切ったフリを期待しましたがローザにキッパリと否定され、また、彼が王国を恨む気持ちに十分理由があることも真実なのだなと思いました。

 『悪神の篝幕ゴエティア 』を行使したエルメスに悪い想いの魔法を悪いまま使ってはダメなのかと問いかけるラプラスの、芯からユースティア王国を憎むその存在自体や何度も対決しエルメスを追い込む強さが絶対悪として主人公にとってのライバルと書いて敵だなと思い、敵として魅力的なキャラクターだなと感じました。

 心折れたエルメスにニィナがかけた言葉は強い想いを持っていない普通の人間である彼女だからこそのものだと思いました。ヒーローのような在り方を強制する呪い、という言葉に私はリゼロが思い浮かびました。

 仲間達がエルメスから戦う理由を一つずつ剥がしていき、そして残されたエルメスその自身の心にカティアがやめるかと問い、エルメスが返した「いやだ」という言葉。理屈でも理論でもなく、立ち上がるのにそんなものはありはしなくて、ただ己の感情がどうなのかを問うことというのがエルメスが再び歩き出す理由としてとても良かったと思います。

 歩みを止めなかったエルメス達の反撃が楽しみです。