【感想】誰が勇者を殺したか

ネタバレあり

 魔王を倒した勇者がその帰りに待ち伏せていた魔人に奇襲を受け殺された。しかし世間では仲間割れや謀殺の噂が囁かれ、真実を知るため勇者の仲間達にインタビューするという形式で進むストーリー。インタビュー後に取材を受けた人物と勇者の視点それぞれからあらためてそのエピソードが語られ真実が浮き彫りになって行くのが面白かったです。

 熱血で高潔で熱い親友キャラのレオン。腹黒ドS聖女のマリア。偏屈で取っ付きにくそうだけど実は情に熱くキーパーソンのソロン。剣も魔法も才能を持たないがひたむきな努力と不思議な魅力で仲間達を惹き付けていくアレス。登場するキャラクター達がみな魅力的でした。

 実はアレスと思われていた人物は彼の従弟のザックで、アレス本人は出身の村から王都に向かう途中で魔人に襲われ死亡していたという真実には驚きました。

 アレスが学院でなぜあれほどひたむきに勇者を目指していたのか、真実を知るとその胸の内が分かったような気がして切なかったです。

 さらに、勇者を導く予言者と言われる存在が巫女の血筋である王妃で、死に戻りを繰り返し魔王を倒す存在を探していたという展開は予想外でまたまた驚きました。

 王妃もまた孤独の中で戦っていて、アレクシアにそんな苦悩を知らずに済んでねた ましいと告げる場面は悲しかったですが、後日談ではザックの取りなしで再びアレクシアと和解出来ているようで良かったです。

 ぶっきらぼうだけど友達思いのソロンが、後日談でお菓子作りを修行中の菓子店の娘に「失敗を恐れず挑戦しろ。俺が買ってやる」と告げるラストが格好良かったです。恋の魔法をかけるとはニクいねぇ。

 悲劇も起こりますが、全体的に暖かで柔らかい、優しい物語だと感じました。