【感想】少女星間漂流記

ネタバレあり

 「キノの旅」に代表される電撃文庫のロードムービー的連作短編に新たな作品が加わった。

 社交的で頭脳労働担当のリドリーと、人見知りで戦闘担当のワタリが、人の住めなくなった地球から人類が新天地を求め宇宙船で飛び出す時代に安住の星を求めて旅をする物語。

 寓話的なお話が多くドキッとさせられる内容もあり、またリドリーとワタリのお互いを大切にする愛情もいいバディだなと思いました。

 危険な状況に陥ってもなんとかしてしまうリドリーの科学力とワタリの戦闘力は痛快でもありました。

 「悪の星」は不死身の悪魔に不満を暴力的にぶつけ続けてきた人々が、悪魔が消えたところでその暴力をお互いにぶつけだし自滅していくという皮肉の効いたお話で、悪魔というモチーフがショートショートの神様星新一先生がよく使われていた印象があるのでいっそう寓話的に感じました。

 続く「環の星」は6ページという超短編でありながらフフッとなるオチが効いていて、果たして彼等はそういう風に進化したのか、それとも以前にもリドリーのような、しかし倫理観のない科学者が訪れていたのか、想像の余地が残るのが楽しかったです。

 最後の「夏の星」ではワタリの前に現れた故郷の人々の意外な真実が明らかになりましたが、最後にワタリが心に浮かべたように、人生という旅が終わればここに戻って来られるのだから今は少しだけの別れだというのが切なくも暖かかったです。