毎年夏の恒例、今年も新潮文庫のプレミアムカバーで購入。
星先生のショートショートといえばまるで最近書かれたような、あるいは将来書かれるような、時代性を感じさせない雰囲気が特徴ですが、今作は初期の短編集だからなのかどことなく昭和の薫 りを感じさせる空気を感じました。
毎回文明の終わりを描く作品が入っているイメージですが、今回も「初雪」がそれでした。ボッコちゃん収録の「冬の蝶」が文明を雪が覆っていくのに対し、こちらは雪が解けることでその下から無残な文明の跡が出てくるという意外な結末が別の見方から文明の最期を描いていると感じました。
星先生といえば宇宙を描いたSF的な話と近未来を感じさせる寓話的な話のイメージが強いですが、今作はホラー的な話がいくつか収録されていたのがこういうお話も書かれるんだと意外に感じました。
毎夜リンゴをかじる夢を見る男「リンゴ」、テレビ出演を夢見る女「窓」、壁から生えてきた腕「泉」、強盗の前に現れた相棒「ひとりじめ」、崖の上に立つ女「夜の流れ」。
どのお話もちょっとゾクッとする結末が面白かったです。
星先生は父の死により事業を継ぐこととなり辛酸をなめたことが人間不信と虚無の思想に繋がったという解説にはなるほどと思いました。