少女を追う悪漢に出くわし「楽しそうだな。俺も交ぜてくれよ」とか、強敵に立ち向かってボロボロになった仲間の前に現れ「よくやったな。後は任せろ」とか、厨二病の憧れが詰まった作品でとても面白かったです!
思春期が歪めた怪物とか、十四歳の時のある感情とか、明らかにそうなのですがあえてのように「厨二」というワードを使わないのがホンモノっぽくてますますシビれます。
nkmr先生は逆張りで弱い主人公の話を書いたとのことですが、今では実は最弱の主人公が最強のフリをするという話も多々見られるようになってきたと思います。
ただそんな主人公と違い、シオンはあくまで普段は普通の学生で実は本当の実力をまだ見せていないっぽい、と思わせるのが目的という、最弱と見せて実は最強と思いきややっぱり弱いという込み入った人物なのが独特で面白かったです。
一人称だと最弱主人公が胸の内ではヒイヒイ言いながら最強を演じる気持ちを知れたりしますが、今作はシオン目線の章は三人称で、シオンの心理描写も多少慌てたりしながら基本淡々としているので、自分の描く理想の演技をやり遂げニヤつくシオンの変人ぶりが読んでいる自分にも底知れなく感じられて面白かったです。
「本当の実力を隠している」ムーブに余念がないシオンですがそのための努力は文字通り命懸けで、その根底にはやはり幼い頃から憧れた英雄や正義感というものがあり、間違えることなく正しい方向にトンチキながら進んで行ってくれるのが嬉しいです。
王女や序列五位の美少女なんかは交友を持ちながらその後出てこないのも「群れるのは嫌いだ」みたいなムーブに見えてきます。
エリザにかけた諦めなければ負けじゃない、やアルフォンスにかけた誰かを助ける為に立ち向かう者が英雄なんだとか、しっかりSSS級な言葉をかけてくれるのが熱いです。