大人気ゲーム「都市伝説解体センター」の世界を人気作家が書き下ろす短編アンソロジー。
私もゲームを遊んでそのラストに驚愕した一人なのでスピンオフ作品も楽しみにしていましたが、円居挽先生が参加されていてさらに気になった一冊です(円居先生は「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」のアンソロジーにも参加されていたのでますます幅が広いなーと思いました)。
■第1話「点を繋ぐ者」円居挽
防犯カメラに映ったUMAの調査を依頼され現地に向かったあざみとジャスミン。
都市伝説を特定したところで依頼を取り下げられるが正体を知りたい二人は捜査を続けある事件との繋がりを見つける……。
ミュータントチキンという都市伝説、確かにそんなのあったなという話で面白かったです。
不審死と依頼者との繋がりが見えだし、アリバイトリックの解明に至るのはさすがミステリ作家さんという感じで面白かったです。
意外なUMAの正体にもびっくり。
ラストは断片的な情報を繋げて真実かのように広めてしまうSNSの怖ろしさを描いていてここは本編にも横たわるテーマだなと感じました。
■第2話「疾駆する亡霊」月並きら
冒頭ジャスミンのカーチェイスから始まる一篇。
AIの話題も取り入れていて現代らしいお話だなと思いました。
私もバイクに乗っていたのでローファーの甲のキズでピンときました。
首がないとはどういうことなんだろうと思っていましたがそういう仕掛けだったとは。
SNSを使って復讐を企てるという、こちらも本編とリンクしたテーマがあって良かったです。
依頼者がジャスミンだったというラストも驚き。
■第3話「忌の杜、祟り石」宮本深礼
大学生時代の山田ガスマスクと谷原きのこが登山に向かった先で過ごした一夜のお話。
一人でしゃべるきのこと対称的に黙々とソロキャンプを味わう山田の描写が味わい深かったです。
キャンプには興味なかったのですがなんかいいなと思いました。手始めにソロキャンプの動画でも見てみよう。
怪奇現象が起きるものの実はオカルトなことは起こっていなかったという、前二篇とはまた違ったテイストのお話で面白かったです。
■第4話「心霊フラメンコ」日部星花
まさかこの人を主人公にするとはという人選にびっくり。本編でミステリーツアーのガイドを務めた人物が主人公。人物紹介でも「ガイド」とされていて作中にも出てこないので本名不明なのがまた面白い。
正直タイトルで「フラメンコで除霊するのか?」みたいな予感はあったのですが服を脱ぎだしたとこで「びっくりするほどユートピア」だ! とクスッとなりました。
ヒトコワな真相もトシカイらしくて面白かったです。
■第5話「止まり木に休息を」尾北圭人
ゲーム本編終了からCパートの間にあったジャスミンと富入警視監のお話。
最初の居酒屋のシーンから富入が豚足を頼んだのがジャスミンを気遣ってだったのがかっこいいなと思ったし、終盤でジャスミンが逆に問い詰められた時に登場したのも良かったです。有能で良い上司だなと思いました。
銀河の本質を見抜いていた世話役の人が殺されていたのはまさかそこまでとは思っていなかったのでちょっとショックでした。
犯人と目される人物に相対した時、ここで退いたらあざみに合わせる顔がないとジャスミンが“解体”に挑むシーンは本編ラストの“解体”を思い出して熱くて泣けました。
事件を通して仲を深めたジャスミンと銀河の交流に感動する一篇でした。
各話とも恐怖を感じるシーンでページが赤地に白文字になる演出が1回ずつ入っていて単行本らしい凝った演出が良かったです。
ゲーム内で使われていたキャラクターの立ち絵やドット絵が配置されているのも良かったです。
全体を通してゲーム本編へのリスペクトが大いに感じられ、キャラクターへの愛やSNSの闇のようなテーマも引き継いでいてとても満足な一冊でした。