その血族のみに継承される魔法によって優劣が決まる世界。腐敗した王国に変化をもたらすため戦ってきた無才の少年達の物語堂々完結。
最高のファンタジー、最高の物語。自分の中では屈指のシリーズでした。
第六創世魔法を発動したクロノ達はユルゲンの『救世の冥界』を超強化。王都に眠る数多の虐げられた怨霊を呼び出し貴族達を虐殺していく。
エルメス達が駆けつけるまでにはまだ時間がかかる。もはや各地で抵抗する気力も失われ蹂躙されるがままだった貴族達だったが、学園でエルメスの姿に影響された子息達が反撃の意志を持って立ち向かい始めるところが熱かったです。
組織の幹部オルテシアと戦うローズ。
対ローズに特化することで有り様を歪めた魔法はローズにとっても有効打になりましたが、お互いに「いつ本気を出すんだ」といい合う底知れない魔法使い同士の戦いが面白かったです。
『無縫の大鷲』の魔銘解放で重力操作を可能にしたローズがオルテシアが放つ複数の黒い雷を全て逸らす姿に無敵感を感じましたし、最後は『流星の玉座』の同時発動で決着するところはギリギリの戦いという感じではなくローズの最強感がかっこよかったです。
ユルゲンにぶつかるのはカティア。
カティアの魔銘解放で作られた世界でシータと再会したユルゲン。彼が組織に入った経緯が語られますが、最初からエルメスを利用しようとしていた訳ではなく、彼らのために裏で行っていた暗躍が徐々にユルゲンの中に瘧のように残っていった結果だったのが知れ、エルメス達に良くしてくれたユルゲンの裏切りがショックだったのでそこは良かったなと思いました。
再びのシータの喪失、自らも魔銘解放を発動してのカティアの救出も良かったです。
ルキウスとサラが抑えていたクロノのもとへ地上で会敵していたエルメスとラプラスも合流。この戦い最大の激突が始まります。
解析と進化を武器とするエルメス相手にラプラスもまた魔法の天才。お互いに未知を吸収し互角の戦いを続けるのが面白かったです。
エルメスがあまり感情的でないのでラプラスの露悪的な言葉が印象的でした。
エルメス達もクロノ達も血統魔法が支配する今の王国はダメだ、という気持ちは同じながら、変革を諦めないエルメス達と全てを破壊することを選んだクロノ達という道の違い。
確かにクロノ達のやろうとしていることは悪に見えますが果たして本当にそうなのか、腐敗した貴族社会に否を突きつけることは同じなのに。クロノ達の芯の通った想いを知るとそんなことも思ってしまいますし、だからこそラプラスの貫こうとする想いも〝綺麗だ〟と思いました。
クロノ達と王国を滅ぼす計画を進めている時が実は楽しかったんだと認めるところも良かったです。
そんな根本は同じだったかも知れない両者が決着を付けなければいけないのかという思いもあったので、リリアーナを依代として天使が顕現する展開が良かったです。
強敵相手に共闘はやっぱり熱い。天使が邪ではなく善の化け物というのも良かったです。エルメスのお互いを知ろうとすることなく一方的に排除するだけではいけないという感覚もこれまでの戦いで納得。
全力で天使を退けた一同。ラプラスがエルメスよりもさらに天才で、何度もぶつかって彼に一度も敗れなかった「俺の勝ちだ。ざまぁみろ!」という死の間際のセリフが切なくもかっこよかったです。彼は本当に最高のライバルで、僕の中ではこの巻の主役は彼でした。
エルメスが作った魔法の使えないフィールドで殴り合うエルメスとクロノ。拳を通した会話でまたクロノの想いも知ることが出来ました。
敗れたクロノとラプラスの最期の会話。地獄でも二人なら暴れ回れると楽しそうに計画を話す姿が切なく優しい。拳を合わせる二人。花ヶ田先生の挿絵にウルっときました。
戦いが終わり仲間の元を回るエルメス。RPGのエンディングのようで良かったです。
変わり始めた王国でエルメスがどんな魔法を創造していくのか、彼らの未来が綺麗なものであるといいなと思います。
素晴らしい物語を書いてくださったみわもひ先生、素晴らしいイラストを描いてくださった花ヶ田先生、ありがとうございました。
最高のファンタジーでした。
P.S.あれ、ニィナの見せ場は?