界達先生によれば「十五歳の四季シリーズ(仮)」第二弾。
事故によりバスケを諦めざるを得なかった主人公・晴 。夏休みに兄と共に祖父母の家にやって来た晴は不思議な少女と出会いセミと名付ける。なぜか晴以外には見えないセミと一緒にいると約束した晴はセミと過ごすうちにバスケへの想いを再び思い出していく。
お祖母ちゃんの家やその周りの田舎の風景の解像度が高く、まさに夏休みにおばあちゃんの家に遊びに行った感じがするのがとても懐かしかったです。
池に飛び込もうとしているように見えたセミの、誰にも好かれないという言葉に自分が好きになると答える晴。天気が崩れ雨の家の中で二人の距離が縮まっていくところが良かったです。
幼馴染みの三方きょうだいやバスケ部の仲間達が晴のもとを訪れ、それぞれが過去の後悔を告白することで再び元の関係に戻っていこうとするところがとても青春だなと感じました。
大樹達との関係も元に戻ろうかという夏祭りの夜。今まで晴以外にはその姿が見えていなかったセミの姿が真の姿を映すという水鏡映しにより大樹達にも見えるように。しかし、その姿は人間の少女ではなく子狐だった。
この時点ではセミの正体は明かされていないので、自分の意志とは関係なく存在そのものが人を惑わせてしまうあやかしのようなもので、好きになった晴とは一緒にいられないから自ら別れを告げるみたいな感動のラストなのかと思って読み進めると、そこは前作でもおどろかせてくれた界達先生。残酷な真実が明かされたあとは数々の違和感に驚かされました。
夢が終わる前にセミのおかげで再び歩こうと思えたと伝えたいと晴が歩き出そうとした時に、左足が輝き自分だけじゃなく色んな人に支えられているというところが泣けました。
祖母により伝承が語られセミの正体が明かされるラストは前作に続き伝奇たっぷりで面白かったですし、ハルに玉ちゃんの声が聞こえた場面は泣けました。
ひと夏の出会いにより少女が再び歩き始める物語。とても切なく暖かで感動しました。