【感想】ソードアート・オンライン 28 ユナイタル・リングⅦ

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 エオラインの窮地に現れたキリトだったが、奮戦も虚しくイスタルにエオラインを攫われてしまう。

 一方、皇帝アグマールの艦隊に強襲されるセントラル・カセドラルではディープ・フリーズから目覚めた整合騎士イーディスがアリス達に合流。皇帝の無慈悲な命で突貫する大型機竜をなんとか退ける中キリトが合流するも、超大型機竜プリンキピアによる砲撃がカセドラルに迫る。

 セントラル・カセドラルが巨大なロケットとなって飛び立つ展開には驚きましたし、さらには宇宙要塞とドッキングしてもうSF過ぎてすごすぎます。両機のコールサインがホワイトコスモスとブラックロータスなのは他の匂わせと違って直接アクセル・ワールドとは関係なさそう?

 翌日、現実世界で明日奈は劇場版SAOPで登場したミトこと兎沢深澄とざわみすみ と再会。アルゴの口からはアインクラッドの殺人ギルドラフィン・コフィンに数々のPKのアイディアを授けていたと思われるプレイヤーの存在が告げられる。

 囚われたエオラインは皇帝アグマールに謁見。そして皇帝の隣にはなぜかユナイタル・リングでキリトたちを苦しめたムタシーナの姿があった。

 今回はゲーム、映画のオリジナルキャラ二人の本編参戦が熱い巻でした。どんどん規模が大きくなるアンダー・ワールド編と、着実に攻略を進めていくユナイタル・リング編の差が面白いです。キリトさんもユナリンの大事な戦いでうっかり心意シンイ を使おうとしないよう戒めてますし登場人物も混乱してそう。

【感想】夏凪渚はまだ、女子高生でいたい。 2 探偵はもう、死んでいる。Ordinary Case

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 夏凪渚を主人公とした、たんもしスピンオフ第二巻。

 本編直前の事件を描いた前巻に続き今回はSPES編の後の束の間の日常が舞台。おなじみ春夏冬あきなし トリオに加えシエスタにそっくりな記憶喪失の少女イブが登場し、ますますかしましい女子高生達のやり取りがとても面白かったです。

 イブが探していたという人を探すという依頼のかたわら、人体のパーツを作る少女、学校に来なくなった演劇部のエース、別世界から送られてくる日記帳、日常の謎を解いていくのも面白かったです。

 そして物語はクライマックスへ。《人類血清》の一員であった記憶を取り戻したイブに攫われた渚を助けるため冬子とはるるはイブと対決。普通の日常に戻るため命を賭けて渚を助けようとする冬子の姿が熱かったです。また、前回は逆に囚われの身だったはるるの力により渚に眠っていたヘルの残滓が奇跡的に顕現したのも熱かったですし、決着の後はるる達に渚のことを託して消えていくところがエモくてウルッときました。

 今回も渚達が事件に巻き込まれた裏で糸を引いていた人物がおり、日常の裏の非日常の、そのまた裏があったのが面白かったです。

 卒業まであと数ヶ月。この外伝がどこまで続くか分かりませんがまだまだ渚達の活躍が読みたいです。

【感想】Lie:verse Liars 俺たちが幸せになるバッドエンドの始め方 3

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 瑠宇の壮絶な、そして現在進行形の過去が明らかに。父親の再婚相手に毒を盛られ父共々殺されそうになるとかちょっとインパクトの強いエピソードで驚きました。しかもその相手と今もお互い親子の顔をして暮らしていてなんならまだ命を狙われてるとか怖すぎます。

 命を絶とうとした時に同じ目的で訪れたこん と知り合い一時期壮絶な日常を支え合った後覚醒者として再会したというのが二人の深い繋がりが知られて良かったです。

 終盤、瑠宇が献と出会ったのは誰かを助けることで生きる口実を作るためでその相手は誰でも良かったというのはそうするしかなかった瑠宇の深い絶望を感じました。それまでに瑠宇と献の間で交わされた「救済なんて偽善だ。助けられることに意味がある。ただ気まぐれに助けられるのはある意味残酷だ」というやり取りがあったので献の瑠宇が助けるのは誰でも良かったというのもまた悲しいことだったろうなと感じました。

 複数の被害者が囚われるという特殊偽世界事件の解決後、瑠宇がその毒によって覚醒者になったかもしれないという話やカリバーンと対立する製薬会社の存在が語られ、この先の物語の展開がどうなっていくのか気になります。

【感想】赤虫村の怪談

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 実話怪談とミステリのハイブリッドシリーズ第二弾。前作の中で今作の件と思われる記述があるのでシリーズとしては並行して進んでいた事件のよう。

 今回もホラーとミステリが見事に融合していて、ある村の有力者一族が次々と死を遂げるのですが一見人間業には見えない状況には村で囁かれる数々の妖怪の仕業と関連付けてしまいます。実際には警察も捜査を行いますし叫子達も一連の事件は人の手による殺人と疑いませんしホラーなのに最初からオカルトの仕業にしないのが面白いところです。

 また今作はクトゥルフ神話をモチーフにしており苦取くとる 神や無有ないある など多くの固有名詞がオマージュになっているのも面白いです。有名なものくらいしか知らなかったので解説を読むとそもそも舞台である赤虫村という名前ももじ りだそうですし、多くの登場人物も関連する名前が付いていたのを知りクトゥルフ神話を読んでみたくなりました。

 怪異が実在する世界観なのでどこまでが人の仕業でどこからが怪異の仕業なのか、怪異の正体はどこまで明らかになるか気になって読み進めました。

 一見人間業に見えない犯行もしっかりトリックがあり面白かったです。この村特有の信仰を利用し最後の密室トリックのため見立てを続けていたというのが今作ならではの謎解きでした。

 一連の事件の犯人は明らかになりますがそこからさらに犯人が謎の事故死を遂げたり犯人に犯行計画を授けた黒幕の存在も匂わされたり最後まで楽しめました。

 シリーズ続刊も予定されているようで楽しみです。

【感想】杖と剣のウィストリア 10

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 ウィルの所属を巡って雷公の杖トルゼウス・ファツジ ゼオと氷姫の杖アルヴィス・ヴィーナ エルファリアが激突。

 最強同士の戦いは激しく今までウィル達が必死に強敵達を倒してきた戦いが文字通り児戯のごとく、ド派手な魔法の連発は迫力があって面白かったです。

 妖精の派閥エルノールの副官二人がレフィーヤとフィルヴィスというのは既出だったようですが今回気付いたのでビックリしました。ゼオ達の戦いの余波を防ぐために張った結界がディオ・グレイルだったのでおお! と思いました。

 最後はじゃんけんという結末の中、意外にも雷の派閥に加わることになったウィルに次はどんな冒険が待っているか楽しみです。

【感想】境界のメロディ

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 Kis‐My‐Ft2のメンバーであり大のアニメファンとしても知られる著者の初小説。

 夢半ばにして夭折したはずの青年カイがバンドメンバーだった相棒キョウスケの前に幽霊として現れ現世に残してきた「忘れ物」を探すことに。

 回想ではキョウスケが出会ってすぐカイに引っぱられるかたちで路上ライブに立ったエピソードが語られますが、のちに仲間でありライバルとなるサムライアーとカイが張り合いお互いの演奏が終わった後に打ち解け合う姿がすごく青春だなと感じました。

 カイが他界した当日に行うはずだったユイのためだけのライブも成功し、これでカイも消えてしまうのかと思いきや、もうちょっとだけ続くんじゃよとばかりに元気(?)な姿を見せるカイ。どうやらカイの忘れ物はまだあるようで物語は続いていきますが、次第にカイの身に起こっている異変が明らかに。別れの予感は確実に近づいてきます。

 キョウスケとカイのユニット「かにたま」と同時デビューする予定だったサムライアー。

 カイを失ったキョウスケが音楽の道を辞めたため彼等だけデビューしましたが、現在のサムライアーはかにたまのコピーとも言える音楽を演っていたのでした。

 二組が路上ライブに立っていた時に彼等をスカウトしたミントレコードの荒木。彼は売れるために必要な物は最低限の技術と物語そして魅力だと語ります。たしかに未熟なタレントは応援したくなりますし、表舞台に出て来るまでの物語があればさらに応援したくなる気持ちは分かります。これは現役アイドルでもある宮田さんも実際に言われたか感じていることなのかなと思いました。

 自身のやりたいこと、周りに求められること、実際に売れるもの。音楽に限らず小説でもなんでも、創作をなりわいにされている方は直面する理想と現実なんだろうなと思いました。

 タケシ自身はファンのために自分のやりたいものとは違う音楽をやっていた。この誰も悪くない悩みがグッときました。これからのサムライアーがファンも自分たちも楽しめる音楽を創っていけたらいいなと思います。

 オカルト的な言い方をすれば未練を晴らす度に成仏に近づくカイ。親しい人達のことを忘れついには父親であるジンのことも忘れたカイにキョウスケはいよいよ別れの時を覚悟します。

 かつて完成させることが出来なかった曲。別れの曲となるそれを演奏する二人の姿にウルッときました。

 カイの言葉で印象に残ったものがあります。

「生きてるんだからそれでいいだろ! 俺だってデビューしたかったよ! (中略)でも叶わなかったんだよ! お前らはみんな生きてる! 歌も歌えるし、ドラムも叩ける、ベースも弾ける、なんだってできる!」

 生きていればきっとなんだってできる。

【感想】まきなさん、遊びましょう 1

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 ホラーな事件に遭遇する主人公が愛と正義の美少女怨霊と怪異を倒す物語でとても面白かったです。

 読み始めて感じたのは現実世界が舞台ですがその情景描写がしっかりしてあってリアリティを感じることでした。実在の地名が多く出て来て東京の地理はまったく知りませんが聞いたことのある地名が出てくるといっきに現実的に思えます。さらに学校外を移動する場面などで感じるのですが風景の描写で印象に残ったのが二話目で被害者のアパートに向かう場面。だいたいどの辺りというのに加えアパートの隣に閉店したドラッグストアがあるという、一話目の三輪車と違いなんの伏線でもない単なる風景を書いてあるのがうら寂しい感じを増してなんだか印象に残りました。

 その他にも怪異の詳しい由来だったりところどころ入れてくる情報から田花先生の知識の広さを感じました。

 もうひとつ感じたのは素敵な言い回しをされるなあというところです。

 特にお気に入りのところを引用させていただくと

道行く人々の大半がスマホを持ち歩く現代の東京に、お化けや妖怪が隠れ潜む暗闇が残っているとは思えない。そんなふわふわした連中が現れたところで街中を飛び交う電波に切り刻まれるのが落ちだ

ふわふわした連中が電波でバラバラになる様子をコミカルに想像したのでフフってなりました。

兄の手元をのぞいてから背中に軽く頭突きして出ていった。包丁を使っていないか確かめる気遣いに、諒介はくすりと笑う。もちろん本気で怒ったわけではない妹も、スプーンをくわえた口元は緩んでいた。

兄妹の微笑ましいやり取り。俳句の毒舌先生風に言うなら二人の表情を映さず口元だけにカメラを寄せるような描写が素敵だなと思いました。

食べた物は一体どこへ行くんだろう、消滅しているとしたら膨大なエネルギーが放出されて地球が危ないんじゃないか――といった疑問が今更ながらわくのだが、天体の危機は高校生の手に余るので関東地方の話を続ける。

宇宙規模の話からこれまた関東といういっきに現実に戻ってくるのが面白かったです。

 ホラーミステリ部分ももちろん面白く、ホラーらしく綺麗に解決はせずちょっと後味の悪い感じも残るのですがキャラクターの明るさでそこは中和されているように感じました。

 二話目なんか私は最後は幽霊の皆さんが肩組んでラインダンスしてる画が浮かびました。コミカルなんですが、それぞれ死んでることは変わらずその理由もちょっとあとにひく人もいますしそこを考え出すとちゃんとホラーだなと。

 すでに二巻の制作も進んでいるようで続きが楽しみです。

 最後、参考文献が載ってるあたりガチです。