どちらかが彼女を殺した 新装版

ネタバレあり

 シリーズ新作「あなたが誰かを殺した」の発売に合わせて三部作とも言うべき過去二作が新装版で登場。

 シリーズとしては加賀恭一郎シリーズですが単巻で読んでもまったく問題ありませんでした。

 クライマックスで探偵役が犯人を指摘するという推理小説お決まりのシーンがなく二人の容疑者のどちらが犯人なのかは明かされないままというのは事前情報で知っていたのですが、確かに二人のどちらもが犯行可能だろうという感じでしっかり読み込まないと分からなさそうです。

 破壊にメッセージがあるという加賀の言葉や最後のゴミ箱のやり取りからして弓場が康正に脅され飲む時に破った睡眠薬の袋が現場にあったものと破られ方が同じだったのかと推理しましたが、逆に破り方が違うという証拠にもなるのかと分かった気になっていたのがますます混乱しています。

 この感想を書いている時点ではまだ解説を読んでいないので楽しみです。

 第一章で園子と容疑者二人の関係は読者には明らかになりますが、それを知らない康正が事実に近づいていくところ、そしてさらに周回遅れのはずの加賀もその鋭い洞察力で事実を突き止めていくのが面白かったです。最後は読者にも明かされていなかった園子の闇の部分も出て来てなんだかやるせない気持ちになりました。康正を信じる加賀と加賀と関わることで復讐心の揺らぐ康正の心境も良かったです。

灰と幻想のグリムガル level.20 かくて星は落ち時が流れた

ネタバレあり

「最終章と言ったな、あれは嘘だ」
 いつも意外な展開で驚かせてくれるグリムガルですがまさか主人公交代(?)で新章がスタートするとはもう何でもありだなとビックリです。二ヶ月連続刊行でいよいよクライマックスかと思っていたらこんなことになるとは。

 ワンダーホールに集結していた義勇兵達と再会し世界腫への反撃の準備をするハルヒロ達。

 そんな中ランタとユメの間に子供が生まれ一筋の希望が差す。

 不死の王ノーライフキング と共闘することになり世界腫との戦いに挑むハルヒロ達。不死の王ノーライフキング により世界腫が滅ぼされるが世界腫によって封印されていた光明神ルミアリスと暗黒神スカルヘルが復活してしまい光魔法と闇魔法の使い手は神の意志が乗り移ったかのように互いに殺し合いを始めてしまう。

 ハルヒロの回想としてスタートした今回なんとなく不穏な感じは匂わされていたのですが、まさかまさか、暗黒神の従僕に堕ちかけていたランタに介錯を請われハルヒロが彼を手にかけることになるとは……。十文字先生えげつないことをされる。

 ハルヒロもアインランド・レスリーと融合し明かずの塔の番人となり、かくて再び時は流れる。

 義勇兵達は日本からグリムガルにやって来ていることも確定しその日本にもなにやら異変が起こっているよう。これからどんな展開が待っているのか、まだまだハルヒロの苦難は続きそうです。

イデアの再臨

ネタバレあり

 映像化電子書籍化不可能の文字に惹かれて購入。同レーベルで大バズりしている透きとおったヤツの二匹目のドジョウでも狙ってるのかなと少々失礼な気持ちで読み始めたのですが、こいつは全然別物だぞと読み始めてその異形さに引き込まれました。

 メタミステリの惹句の通り主人公達は早々に自分たちが小説世界の登場人物だと認識し行動するのですが柱の章題やページ数、本文前の登場人物一覧など本文を超えて言及するのが楽しかったです。

 ライトな作風を逆手に取り第一章の最後は大事件が起こりますが、それでもどシリアスというわけでもなく、これならやっぱり怪しい神野が犯人かなと思っていたらまんまとミスリードに引っ掛かりました。

 真犯人を追い詰め夜の学校で対決という展開は盛り上がりました。安藤が消滅の運命を覚悟し最高の相棒である主人公の勝利を確信し後を任せるシーンが熱かったです。

 真犯人の正体が名もなき脇役で姿が確定していない真島の役を乗っ取ったという真相にはなるほどそういうトリックが成り立つのかと驚きましたし、小説の外側に行きたいという気持ちも分かる気がして少し同情しました。

 ラストはタイトルに隠された秘密により世界が再生しハッピーエンドを迎えられたのが良かったです。

領怪神犯 3

ネタバレあり

 シリーズ完結! 現在、過去を巡りそして未来を生む物語が紡がれる。

 人知を超えた領怪神犯と人との関係にどう区切りが付くのか想像もつきませんでしたが、国生みの神と神義省の関係、そこに在わす神が人間の味方だったとかクライマックスはこれまでの謎も明かされてとても面白かったです。二十年前の因縁の地が再び舞台となるのも運命的。

 今回も切間の頼みを聞いて助けてくれた桑巣の神が優し過ぎる。

 二十年前なにも出来なかった梅村が片岸と共に知られずの神のもとへ向かう決意をし、妻と娘のいる世界という未来を宮木に託す場面が泣けました。烏有と切間が再会出来たところも泣けました。

 全ての神を消して普通の世界に戻すのだと思っていたので宮木が願ったように神と共存している世界になったのは確かにこれがハッピーエンドだしこれで良かったなぁとほっこりした気分になりつつ、神という存在が普通に在る世界ってどんなだろう、色んな事が起こるんだろうかとワクワクする気持ちにもなりました。

 宮木も片岸もみんな報われて最高のハッピーエンドでした。

VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた 8

ネタバレあり

 配信者を育成するゲームの配信とワードウルフが面白かったです。

 記憶を取り戻したダガーちゃんを再び記憶喪失にするべく(?)究極のハンバーグ作りに挑戦するシュワちゃんとダガーちゃんがほのぼのしました。シュワちゃんが料理上手なのは意外でびっくり。

 ツッコミを入れたりボケたりぶいでんの中でも重要な「コメント」はまるで自分も一緒に楽しんでいるようで1巻の頃からずっと面白いと思っています。

死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相

ネタバレあり

 都市伝説の好きな方なら名前を聞いたことがあるかもしれないディアトロフ峠事件。雪山で九人の大学生が遭難し遺体で発見された事件ですがその状況と遺体の奇妙さ不可解さから色々な原因が噂される事件です。

 本書はそんなディアトロフ峠事件に興味を惹かれた映画作家の著者が関係者に取材し、果ては現場となったディアトロフ峠まではるばる足を運んで事件の真相を解き明かそうとしたノンフィクション。

 読み始めるまでは証言や証拠を並べたような難しい内容なのかなと思っていましたが、実際はオトルテン山を目指すディアトロフ達、遭難したディアトロフたちを探す捜索隊、そして事件の謎を追うドニーの三つの視点が交互に描かれ運命の瞬間へと向かっていくスリリングな読み物としてとても読みやすく(慣れないロシア系の人名・地名を除けばですが)、面白かったです。

 政府の陰謀やUFOや宇宙人の仕業とまで言われるこの事件、著者はあくまでそれらは陰謀論であると科学的な原因を探すスタンスです。

 本書の内容は以前「ダークサイドミステリー」というテレビ番組で取り上げられており、その回はかなり本書に沿って作られていたんだなというのがわかりました。結論がカルマン渦により発生した超低周波音であるというのも記憶の通りでした。

 もちろん結論は著者の推理であり真実は神のみぞ知るですがこうして未解決の謎に光が当たって真実に近づいていくのは興味深いです。

変人のサラダボウル 6

ネタバレあり

 リヴィアを裏社会に引き込んでいたチンピラのタケオが公安警察の仮の姿と分かりビックリ。

 反社の帝王として裏社会にどんどん馴染んでいくリヴィアと、芸能事務所に入ったり惣助と東京散策を楽しんだりするサラとの違いが面白かったです。

 サラが芸能事務所で出会った陽葵も個性的で今後の活躍が楽しみです。

 ラストでは一気に二年の時間が進み、異世界からやって来た要人を狙う刺客という逆に今までなんで出てこなかったんだというポジションのキャラクターも現れるようで物語全体の動きがあるのか楽しみです。