【感想】黒牢城

ネタバレあり

 戦国時代、織田信長に謀叛を起こした荒木摂津守村重あらきせつつのかみむらしげ 。構える有岡城は織田軍に囲まれ籠城を余儀なくされる中、不可解な事件が起こる。使者として訪れるも囚われた黒田官兵衛はその頭脳で事件を牢の中から解いていく。

 思っていたよりも重厚で本格な時代小説でこの時代の知見が広がって面白かったです。

 特に感じたのは命の軽さでした。身分関係が絶対で上の者の言葉には逆らえないのが当たり前の時代というのも現代、特に今の令和からすればとても考えられませんが当時はこれが当たり前だったのだろうと思いますし、人質の生き死にやなにかの失敗で命を取られるのも当たり前、逆らえば一族郎党皆殺しの世界というのがかつては当たり前にあったんだなというのが少し怖ろしく感じました。

 毛利の援軍を頼りに謀叛を決めた村重ですが、中々援軍が訪れず時が経つにつれ機運が高かった城内に不穏が広がっていく様子も、きっと良くない結末が待っているだろうなと思わせるには十分不安を煽ってくれて面白かったです。

 一つ一つの事件もミステリとしてとても面白く、第一章の鑓とか第二章の兜を脱ぐ場面があることなどちゃんとヒントだったことが分かる要素が入っているのも楽しめました。第三章は時系列も絡んでくる本格的なもので、茶壺が盗まれたことと殺人がイコールでないという真相が面白かったです。

 城内に不安が広がっていく中で、不可解な事件が仏罰だという風聞も流れたことにも理由があり、それぞれの事件で残った違和感が最後に繋がる展開もとても面白かったです。