【感想】invert 城塚翡翠倒叙集

ネタバレあり

 ミステリ界を席巻した前作に続き翡翠ちゃんが活躍する第二弾。

 前作も形を変えた倒叙と見ることが出来ましたが今回は本格的に倒叙ミステリ。翡翠と犯人の知恵比べがとても面白かったです。

 いずれも一見完全犯罪に見える殺人事件を翡翠は持ち前の観察力で殺人と見抜き、犯人の目星まで付けてしまいます。しかしそこから証拠を固めていくため犯人に接近する翡翠との攻防が本作の読みどころ。論理により犯人を導き出せても探偵が推理を披露して犯人が観念してくれる推理小説と違って起訴するためには確たる証拠が必要なのだと翡翠がこぼす場面が印象に残りました。

 こんなちょっとしたメタ要素があるのも面白く、展開としてまこと の言動でヒントを得た翡翠がさて解決編です、あなたは探偵の推理を推理することが出来ますか? と読者に挑戦状を投げかける場面が毎話挿入されるのが面白かったです。古畑任三郎やシャーロック・ホームズのオマージュも楽しかったです。

 もう一つ、推理小説は論理が蔑ろにされている、推理を楽しむより驚くことが目的になっていて勘で犯人を当てて快感を得たいだけだという言葉はものすごく心当たりがあってドキッとしました。

 そうは言っていてもラストはあっと驚く仕掛けを仕込んであるんだから参りました。

 犯人視点が描かれるので犯罪を犯す理由も様々ですが、特に二話の犯人は大倉先生の解説にもあるように犯人側を応援してしまいました。しかし正しい殺人などないと叫ぶ翡翠の訴えにハッとしました。