【感想】メルカトル悪人狩り

ネタバレあり

 メルカトルが登場する作品はあまり読んでいないのですが、やはり「翼ある闇」での登場が印象に残っています。飄々としていて現れたと思ったらとんでもない推理であっという間に事件を解決してしまう捜査らしい捜査もしない神秘的な探偵、そんなイメージだったのが今作を読んで少し人間らしいところもあるのを知ってちょっとメルカトルの事を知れたかなと思いました。短編を読んだ時は美袋はレギュラーメンバーだと知らなかったので決まった助手役がいたのも驚きでした。

 「水曜日と金曜日が嫌い」はアンソロジーで既読ですが姿を見せていない人物が犯人というのを推理してしまうのにとても驚いたのを覚えています。ラストで美袋のアパートが焼けたという報せがもたらされますが、今作を読むと一つ前の話はそのアパートで事件が起き、次は焼け出されたことが書かれていてシリーズものとして繋がっているのが面白かったです。

 「メルカトル・ナイト」の最後、メルカトルがわざと鵠沼に犯行の余地を残したのではないかと疑念を抱いた美袋に実は鵠沼のライバルからも依頼を受けていたと打ち明けますが、鵠沼が犯行を断念すれば良し、そうでなければ……と落雷まで予知していたのではと思わせる怖ろしさを感じました。

 「天女五衰」でもメルカトルの行動がなければ牧の死はなかったのではないかという美袋に返した犯人の注意を牧に向けなければ美袋が危なかったという言葉に相棒のためには犠牲を厭わない怖ろしさと、全能のように見えて全てを防ぐことは出来ない、メルカトルの能力にも人間らしく限界があることを感じました。

 「メルカトル式捜査法」では再び登場人物一覧の外から犯人が現れ驚きました。