【感想】緋色の研究

ネタバレあり

 書店で東京創元社の70周年アニバーサリーカバーを見かけ購入。

 始祖シャーロックが初登場した作品で、相棒ワトソンとの出会いが描かれていたのが面白かったです。ベイカー街221番地Bに落ち着く前の場面でホームズが病院の研究室に居たのが思ってもみなかったので驚きました。「名探偵」として活躍する姿しか知らないのでもともと探偵コンサルタントなる仕事をしていたというのも驚きでした。

 人間を観察してその人の職業や人となりをズバリと言い当てるお馴染みの観察術はもちろん、化学に通じていて化学を活用すれば今までは困難だった様々な事件の解決に役立てることが出来ると、今で言う科学捜査に積極的なのも推理力だけでない研究者としての顔も知れて良かったです。

 物語自体はおそらく別の形態で昔読んだことがあるので、ホームズの部屋を訪れた人物をこの人が犯人だと名指しする場面はおぼろげながら記憶にあった気がします。

 第二部で過去の回想が挟まれる手法は古典ミステリの象徴的手法というのを解題で知りましたが、読んだ時に思い浮かんだのは島田荘司「ロシア幽霊軍艦事件」の回想シーンでした。

 空き家で見つかった不審な遺体という一見奇妙に見える事件を、様々な観察から一目で真相を見抜いていたホームズの推理披露がお見事でした。