【感想】りゅうおうのおしごと! 盤外編 1

ネタバレあり

 八巻までの特典掌編とドラマCDの脚本を小説化した中編に、書き下ろしの中編を加えた一冊。

 二巻特典の「解明」はコンピューター将棋について書かれてあり、将棋ソフトとの上手い付き合い方を八一とあいが話す内容でしたが、八年後の現在本編ではまさにAIと将棋がテーマの物語が進んでいたところで、この頃から比べるとそれだけ将棋ソフトが当たり前になってきたのかなと思いました。オチも明日にも将棋は計算し尽くされて最終解が判明しているかもしれないという本編を予言するようなものだったのが印象的でした。

 第二話はJS研のメンバーや二人のあいに大会の楽しさを伝えようと八一が大会を開くお話でしたが、手伝ってくれた姉弟子の陰謀でハチャメチャな大会になるのが面白かったです。

 優勝の副賞として八一の弟子になる権利を懸け決勝で対決するあいとシャルちゃん。負ければお払い箱になると吹き込まれたあいは鬼気迫る将棋で容赦なくシャルちゃんを追い詰めていきます。ノータイムの早指しで目まぐるしく駒を進めるあいはアマチュアでは読み切れない罠を張り巡らせ、一つ間違えれば勝負が決まるという局面を作り出します。

 そんな大人げない(シャルちゃんから見れば年上で実力も上)あいの様子とは対照的にシャルちゃんが八一の教えを信頼しニッコリと決定的な一手を指す場面が泣けました。

 序盤のいつものワチャワチャの中に伏線を仕込んでおいて最後に持ってくるのが中編とは言えいつものりゅうおしに負けない熱さですごかったです。

 第三話ではそんな熱い勝負を見せてくれたシャルちゃんが八一のためにお手伝いがしたかったと泣き出し、姉弟子が彼女も守られるだけの存在から自立しようとしているんだと気付き一緒にやろうという場面がグッときました。