林業で財を成した霊是 家の当主春秋 が行方不明となって七年。死亡扱いとなり遺言書が開かれる場に居合わせた古賀と樋山 が殺人事件に巻き込まれて行く。
山を手放したい春秋の息子一高 と山を守りたい春秋の弟冬夏 。遺言が開かれた場で冬夏が心臓発作で急死し急遽葬儀が執り行われるが、冬夏の遺体は棺から忽然と消失していた。
シンプルな王道本格ミステリで面白かったです。
一族の遺産を巡るあれこれが絡んでいそうなシチュエーションや遺体が消えるという謎めいた事件も面白かったです。
犯人に関してはかなり怪しい動きをする人物がいるのでそうそうに目星は付くと思いますが、Howの部分が最後の事件なんかは見当も付かなかったですしトリックには驚きました。
遺体消失は朽木が遺体をバラバラにしておいて棺の窓から取り出したのかなと推理しましたがやったことは概ね当たったものの理由は大ハズレ。タイミングはお寺に運び込んだ時にもう一つの棺とすり替えたのかと思いましたが法道和尚も共犯だとは思いませんでした。
一高殺しは毒矢を使ったと思わせて合図の呼び笛に毒を塗っておきアリバイを確保し後から朽木が矢を刺したんじゃないかと思いましたが大ハズレ。
樽峰殺しについては先の通り見当も付かず、特に貼られていたお札はなんの意味があるのか気になりました。
探偵役の樋山によりすべての謎が解かれますが、気付かなかった細かいヒントや伏線がたくさんあり驚かされました。どこかで使われるだろうなと思っていた浴びせ倒しがあんなピタゴラ殺人装置のヒントだったとは。
大きなどんでん返しとかがあるわけではないですが雰囲気のある舞台と唸るトリックに向き合えて楽しかったです。